「間貫けのハコ」のジオラマができるまで。情景師アラーキーさんインタビュー【ブランド裏話】
BESSの新商品「間貫けのハコ」の商品ページにドーンと出てくるイメージ写真、実は精巧なジオラマだとお気づきだったでしょうか。
制作していただいたのは、ジオラマ作家の情景師アラーキーさん。
この記事では、アラーキーさんがジオラマに目覚めたきっかけから、間貫けのハコ制作時の際のエピソードまで、たっぷり語っていただきました!
──ジオラマ制作を始められたのはいつですか?
僕が物心ついた頃はゴジラやウルトラマンといった特撮ものが全盛期で、ミニチュアを使った撮影に興味を持ちました。
プラモデルを作るのが好きで、将来なんとなくこういう仕事ができたらと思いながら大きくなったんですが、今につながるほど大きな衝撃を受けたのは中学時代。
模型本の記事を見て、自分でも本格的なジオラマを作ってみたいと思ったんです。
──その後、社会人になると同時にジオラマ作家になられたのですか?
高校を卒業する頃にも「特撮のミニチュア職人になりたい」という気持ちは残っていたんですが、日本ではまだそういう教育が整っていなくて。
大学でデザインを学び、デザイナーとして大手メーカーに就職しました。
その頃は自分の中でジオラマづくりの優先順位は下がっていたんですが、業務のデジタル化に物足りなさを感じて、手慰みにまたやり始めたら手応えがあった。
そうだ、こういう手を汚しながらモノを作る仕事をしたかったんだと思い出して気持ちはどんどん高まったんですが、それで食っていけるとはまだ思えないわけです。
──会社員から専業作家に踏み出されたきっかけはなんですか?
模型雑誌主催のコンテストで受賞したのをきっかけに、プラモデルのレビューを書く模型ライターの仕事が入るようになったんです。
当時はサラリーマンでしたから、本名で活動するわけにはいかない。
それで「|情景師《じょうけいし》」という活動ネームをつけたんです。
あるとき“バズる”という経験をしたんですが、SNSで投稿していた作品もわっと拡散して、ジオラマの仕事が入るようになってきたんです。
一方で、会社では毎日終電というくらい忙しくて。
いよいよ二足の草鞋が成立しなくなってきたときに、妻や友達にも後押しされて、えいや!で会社を辞めることにしたんです。
──ここからは「間貫けのハコ」のジオラマ制作についてうかがいたいのですが、そもそもBESSのことはご存知でしたか?
当時はBIG FOOTというブランド名でしたが、僕が大学生くらいの頃にBESS DOMEを見て、バイクやキャンプといった自分の趣味を活かすには理想的な家だと思いましたね。
それ以来、BIG FOOT/BESSが発信するライフスタイル提案にはすごく影響されながら生活してきました。
だから今回のお仕事の依頼があったとき、「待ってました、ようやく来ましたね!」という気持ちになりました(笑)
──「間貫けのハコ」をジオラマにしてほしい、と説明を受けたときの率直な感想はいかがでしたか?
僕はネーミングが決まる前に設計図をもらっていたので、今までの流れとはちょっと違うものが出てきたなという印象はあって。
BESSのそれまでの建物には、パッと見て「うわっ、かっこいい!」となるような洗練感が共通していたと思うんです。
でも今回はうろこのようなスレートが貼られていて、なんだこれは!という異質さを感じました。
ただ、「間貫けのハコ」という名前を聞いて、膝を100回くらいたたいて納得しました。「まぬけ」という響きがぴったりで。
──制作過程で大変だったところはどこですか?
スレートはずれを考慮して横一枚でつながっているんですが、ものすごく列があるので非常に気を遣って貼りました。
途中の変更もありましたが、それは想定しながら設計していました。
メーカーにいた経験から、先読みして必ずリカバリーできるようにしておくというのが他の作家さんにはない点だと思っています。
──今回は具体的にどのようなことを先読みされていましたか?
ジオラマ制作の依頼には大きく分けて「映像や写真に使うもの」「展示をメインにするもの」のふたつがあります。
最初のミーティングのときに「僕は世界一空気が読めるジオラマ作家です」と自己紹介したんですが、今回は依頼のあった写真だけではなく動画や展示にも発展するなと先読みして設計しておきました。
そうしたら、やっぱり動画コンテンツ「まぬけ座」にも使われることになりましたね(笑)
──「間貫けのハコ」に住むとしたらどういう暮らしがしたいですか?
階段の吹き抜けのところにびっくりするくらい大きな木を置きたいですね。
家の中から縁側のほうを向くとバーッと開放的なので、一日中窓を開けて、家庭菜園もかねた植物がいっぱい見えるようにしたいです。
あそこは大きな額縁みたいなものだと思うので、外の世界を「四季を通じて変化がある絵」と捉えながら生活するというのが理想ですね。
──BESSにおける「まぬけ」のように、大事にされている価値観はありますか?
「間貫けのハコ」の外観は雨風にさらされたり苔が生えたりといった経年変化が渋みになるという考え方だと思いますが、そういったアナログ感は非常にいいと思います。
道具もそうですが使い込んで傷がついたり色がくすんだりする中でどんどん味が出てくる、そういうことも価値として大切にしていきたいですね。
──アラーキーさん、どうもありがとうございました!
▼ジオラマをスチール撮影したときの様子