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【イベントレポ】暮らしも生き方ももっと自由に。『クラシガエトーク』(後編)

代官山 BESS MAGMAにて開催した「クラシガエトーク」。後編では、写真家の西山勲さんのキャリアについてのお話から「どんな価値観を大切に生きていきたいか?」のヒントを探りました。

▼前編の記事はこちら

自分の生き方を見つめなおした旅

『肩書きは写真家と言っているが、気づいたらそうなっていた』と語るのは、今回のゲストである西山さん。
デザイナーとして10年以上のキャリアを積んで、独立して事務所も構えていたが、体を壊し、一命を取り留めたことが、自身のキャリアや生き方を見つめなおしたきっかけだったそう。

『社会人になってからほとんどの時間、机の前に座ってたなと。それがこれからも続いていくのか?とふと気づいて。きっと気づいただけでは行動に移せなかったけれど、一命を取り留めたことで、生き返ったような気持ちで、旅に出ようと。自分はモニターの画面の中だけしか知らないなと思ったんです』

それまではパッケージ旅行しかしたことがなかったという西山さん。
『全然何も知らない場所へ行って、はじめての環境に身を置いてみたくなって。今まで危険と思っていたことや、枠の外へ出ていくことに抵抗がなくなったんですよね。何か新しいものが見たい、という気持ちでした』

ところが旅の最初からロストバゲージという不運に見舞われてしまいます…!!
しかしその出来事が、西山さんの写真の原体験へと繋がっていきます。

『大荷物を持って行ったのに、カメラが入ったサブバッグだけになってしまって。知らない場所で荷物はカメラだけなんて普段なら怖いと思っていたはずなのに、逆にすごく自由になった気がして、自分の中で感情が昂って。どこまででも行ってやろう、みたいな』

そんな初めての旅で、被写体と1対1のコミュニケーションを写真にすること、ものづくりの面白さに感動を覚えたそうです。帰国後、現地で撮りためた写真で個展を開催するまでに。

アーティストとの出会いと『Studio Journal knock』の創刊

ここで、宇都宮さんから
『旅に出てどうなりたいとかはあったんですか?』という質問が。

『最初は旅が目的でしたが、写真を一通りやってみてこんなに面白いんだと気づいた』と、現在までに7冊発行されている「Studio Journal knock」の創刊のきっかけとなった、タイでのアーティストとの出会いについてお話くださいました。

タイでの取材風景(西山さん撮影)

『アーティスト同士でシェアハウスをしているところに密着して、その暮らしぶりを間近で見ていると、「なんだこの暮らしは」と。絵を書いて、夕暮れに食事とお酒を楽しむ。家に帰ってまた創作をしていると、音楽をする友人がやってきて…。今までの自分の価値観にはなかった暮らしぶりを目の前にして、「これはすごい場面に立ち会っているのでは?」と感じて、記録を残したいと、帰りの飛行機の中でもうラフを描いていました』

将来の算段はなかったけれど、無心で冊子を作り始めたという西山さん。書店へも自ら赴き‟行商の旅”を続け、一つ一つ販路を開拓していったそう。

写真集「Secret Rituals」と「Studio Journal knock」

失敗を失敗と思わない

こうした西山さんの働き方・生き方を見つめなおした経験から、「移住」に限らず、人生での大きな決断や行動することについて、宇都宮さんと西山さんの間で話は移っていきました。

宇都宮さん:
『綿密に計画を立てて移住する方もたくさんいるが、意外にそうじゃない方も結構いて。そのときに‟失敗を失敗と思わない”というのは結構大きなキーワードかなと思いますね。障害やトラブルはたくさんある。でも「失敗だ、ああやらなきゃよかった」ということではなくて、すべて経験であると。乗り越えたり、回避したり、退却したり。それ自体が経験で自分のノウハウになっていくし、次への知恵になっていると思いますね』

西山さん:
『世界一周の旅をして、約2年間で4冊発行しましたが、その間退却や失敗はほとんどなかった。一歩引いて、将来を考えるとどうなるんだろうと思うこともあったけれど、目の前に広がる新しい世界があまりにも面白くて。あとは「いただいた命」というのが自分の中では結構大きかったですね。前に進むしかないという気持ちでした』

Studio journal Knockの制作風景(西山さん撮影)

宇都宮さん:
『みんな選択肢は無限にあるのに、「こうでなければいけない」みたいなことに捉われて生きているなと自分でも感じている。一つより二つ、「これやってもいいかな」「これもやれるじゃん」と選択肢を増やしていけば、実際その選択をしなくてもわくわくした気持ちで日々過ごせるかなと。BESSユーザーの方の取材も何度か行かせてもらいましたが、「あのとき決断してなかったら…」という声は本当によく聞く。それは今の生活が最高で、以前がダメ、という単純なことでなくて、「自分で選び取った、生活をクリエイトしている充実感」が大きいのかなと。それは西山さんの行動にも通じると思います』

自由に自分で暮らしを作っていく

海外の取材経験も多数のおふたり。最近では日本でも副業や色んな生き方を選択する人が増えてきていますが、10年以上前から、取材先で出会った人たちの自由なライフスタイルに衝撃を受けてきたんだとか。

宇都宮さん:
暮らしって、こういうもの、と誰かが決めるものではなくて自分で作っていくものなんだなと本当に学ばされました。日本で生まれ育って暮らしていると、いい学校に入ってなるべく給料の良い会社に入って、安定した生活をして…という、それももちろん悪いことではないけれど、ステレオタイプを刷り込まれてきたんだなと。
世界各地で取材したときに、こんなに自由なのかとショックを受けたし、自分の手で暮らしを作って楽しんでいる人がたくさんいるんだなと』

生きていくうえで大切にしたいこと

最後は、まとめとして、お二人が大切にしていることを伺いました。

西山さん:
他人と比べないこと。自分のなかに大切なものがそれぞれあると思うんですけど、そういったものを自分の中に大切に囲んでおくことで幸せを感じられる。自分が好きで作っていたものを、人に見せることが可能な世の中になって、本来自分が好きだという思いがねじ曲がってしまうことがある。それってすごくもったいない。自分の聖域たる場所があるとそれが守れるのかなと思いますね。幸せなんだよ、を人に見せようとすると本質的な喜びから外れてしまうような気がする。なるべく僕はそういう風に生きていきたい』

宇都宮さん:
『ひとつは、オリジナルでいたい。これが幸せだとか、こういう生き方がかっこいいとか、ステレオタイプもあっていいですが、生き方を語れる、までいかずともちょっとずつユニーク、個性的であるという集合体が自分の人生である、という風にしていきたい。小さなことでも、生活の一つ一つを自分で考えて選んで、それがなるべくオリジナルであると充実感が得られる
あとは、なるべく行動することを選びたいなと。人生においてやるかやらないかという判断する場面で、ある程度見立てや根拠があってやらない、という選択もあると思うし、なかなか決断できないことも多いですが、行動して後悔するほうが少ないのかなと思いますね』

様々なキーワードやヒントがたくさん出てきたクラシガエトーク。幸せはひとつではないし、それぞれの選択の先にいい道がある!と思いたいですね。
宇都宮さん、西山さん、どうもありがとうございました!

▼後編の動画はこちら

西山勲さん:編集者・写真家・グラフィックデザイナー
2013年に世界のアーティストの日常をドキュメントするビジュアル誌『Studio Journal knock』を創刊。旅をしながら世界各地のアーティストを
取材し、編集・制作・発行まで旅先で行うスタイルで、これまで7タイトルを発行。2021年に初の写真集「Secret Rituals」を出版。自らも鎌倉と福岡の2拠点生活で、海外の暮らし事情にも詳しい。

宇都宮ミゲルさん:編集プロダクション「miguel.」代表
デザインや旅、スポーツ、音楽、ビジネスなどを主な対象に執筆・編集。2015年に東京と浅草から奥多摩の山中にある古民家へ移住。夫婦で子育てをしながら田舎暮らしと仕事を満喫。移住を機に移住専門誌「LOCOLA」を発刊、現在は里山暮らし専門誌「soil.mag.」をプロデュース中。2022年5月「お気軽移住のライフハック100」を出版。

▼西山さんのWebサイトはこちら!

▼宇都宮さんの「お気軽移住のライフハック100」はこちら!

▼BESSのクラシガエはこちら


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